「リスクを取りたいなら攻めの銘柄を、抑えたいなら守りの銘柄を」
投資の世界でよく聞く考え方ですが、私はこれに従っていません。
銘柄はオルカン一本のまま、リスクは現金とオルカンの比率だけで調整しています。
これは感覚でやっているのではなく、ポートフォリオ理論に基づいた裏付けがあります。
自分のリスク許容度に合わせて資産配分を決めるとき、じつは銘柄を選び直す必要はありません。
その理由を順番に説明します。
リスクの取り方は2つしかない
投資でリスクの量を変える方法は、突き詰めると2つです。
- 何を買うかを変える(攻めの銘柄・守りの銘柄を選ぶ)
- いくら買うかを変える(リスク資産と現金の比率を変える)
多くの人は1つ目でリスクを調整しようとします。
しかし理論的には、まずは2つ目を実行するのが正解です。
トービンの分離定理
ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・トービン氏が示した「分離定理」という考え方があります。
要点は以下です。
「最適なリスク資産の組み合わせ」は、リスク許容度に関係なく全員同じ。
違うのはそれを「どれだけ持つか」だけ。
簡単に言えば、リスク資産のポートフォリオの中身は同じでよく、リスクの度合いは安全資産をどれくらい持つかで調整すればよい。
つまり銘柄選びとリスク量の調整は分離できる。
攻めたい人も守りたい人も、持つリスク資産は同じで、変えるのは現金との比率だけでいい、ということです。
厳密な理論では「市場全体を丸ごと持つポートフォリオ」が最適とされます。
これを個人が実践する現実解が、全世界の株式を時価総額どおりに持つオルカンです。
リスク調整は現金とオルカンの比率を変えるだけ
この定理に従うと、投資はこうなります。
- リスクを増やしたい → 現金を減らして、オルカンを増やす
- リスクを減らしたい → オルカンを減らし(買付を抑えて)、現金を増やす
銘柄は変えない。
動かすのは比率だけ。
私が現金を150万円から100万円に減らしたのも、この比率をリスクを増やす側に動かしただけでした。
私も「銘柄で守る」を考えた時期がありました
株式投資をしていると、オルカン一本では物足りないのではと感じる瞬間が来るはずです。
REITを混ぜれば不動産にも分散できる。
VIGなら下落耐性が高い。
債券を加えればリスクが下がる。
私自身、そう考えた時期がありました。
REITは不動産ではなかった
不動産と同じイメージでREITを検討したこともあります。
しかし実態は株式に近い動きをし、短期的には株式以上に値下がりが大きい場合もある。
守ってほしい時に大きく下落する過去があるため取り入れませんでした。
VIGは魅力的だったが、米国集中に拍車をかけるだけだった
下落耐性の高いVIG(米国増配株ETF)はかなり検討しました。
切り取り期間によってはS&P500を上回る成績を出し、増配株の集まりだから将来的な増配も期待できる。
魅力的な選択肢でした。
ただ全米やS&P500、NASDAQ100を既に持っている状態でVIGを追加しても、銘柄が被るだけです。
しかも米国一国集中に拍車をかけることになる。
これから40年以上米国の上昇を信じきれるかと言えば、そうではありませんでした。
これも取り入れることはしませんでした。
銘柄を増やしても「守り」にはならない
リスク資産をいくら組み合わせても、リスク資産であることに変わりはありません。
REITも、VIGも、株式と同じく下落局面では値下がりします。
分散の目的を、「下落を小さくするため」から「上昇を漏らさず拾うため」に変えましょう。
オルカンであれば全世界の株式市場を時価総額加重で保有するため、どの国・どの企業が伸びても上昇を取り逃がすことはありません。
下落を嫌う分は現金で持つ。これこそが分離定理の実践です。
無リスク資産はどこに置くか
外国債券は無リスク資産の位置づけで語られますが、近年は株式との相関が強くなっています。
無リスク資産のつもりで持っていても、リスクを完全には排除できない。
無リスク資産の基本は円で持つことです。
ただし大きな金額を円現金で持ち続けると、インフレによる購買力が低下します。
そのような場合は個人向け国債(変動10年)を検討しましょう。
インフレ局面で利率がある程度追随するため、純粋な現金より合理的な場合があります。
銘柄でリスクを上げるのはフルインベストの後
リスク資産を100%(フルインベスト)にして、それでもまだリスクを取りたいとなった場合に検討するのが銘柄です。
投資用の現金を残しつつリスクの大きい商品を買うのは、車の積載に余裕があるのに屋根に荷物を乗せて走行するようなものです。
もっとリターンが欲しい(リスクを取りたい)場合は、まずリスク資産を100%にすることから始めましょう。
▶ 関連記事:配当金より取り崩しの方が手残りが多い理由 数字で比べてみた
▶ 関連記事:レバレッジ型投信を買わない理由 「2倍の商品は2倍にならない」という事実
オルカンと現金。それこそが最適
何を買うかは悩む必要はありません。
大切なのは、自分のリスク許容度に合わせて比率を決めるだけ。
下落しない現金があるから、どんな市場環境でも変わらない生活を送ることができる。
銘柄選びに悩む時間も、攻守の切り替えに悩む時間も要りません。
シンプルであることは、理論的に正しいことでもあったのです。
▶ 関連記事:なぜオルカンが最適なのか ― 銘柄選択で最も大切な2つのこと
▶ 関連記事:投資に回す割合はどう決める?

コメント